鉄骨製作管理技術者1級受けてみた(その6 ラーメン構造の剪断力図、曲げモーメント図)

 単純梁の次は、ラーメン構造のQ図、M図です。

 ラーメン構造は柱と梁が剛接合でがっちり固定されている構造で、ドイツ語のRahmen(額縁)からきています。ラーメン構造は建物の構造で最もよく使われている構造です。
 鉄骨ファブで作るほぼ99%はラーメンと言っても良いくらいです。

 ラーメン構造のQ図、M図の力の符号と記載する位置を図-1a, 1bに示します。

図-1a ラーメン構造のQ(N)図の符号と記載位置
(外側が+、内側が-)

図-1b ラーメン構造のM図の符号と記載位置
(外側が-、内側が+)

 Q図(N図)の場合は構造を示す線の外側を+、内側を-とします。
 M図の場合はその反対で、内側を+、外側を-とします。

 では、簡単な例として図-2のようなパターンについて、Q(剪断力)図とM(曲げモーメント)図を考えていきましょう。ABCDはラーメン構造とします。

図-2 簡単なラーメン構造の例

 図-2 において外力はC点に外力Pが作用しているだけです。

◆反力を求める
反力の図は図-3で示される。

図-3 ラーメン構造に生じる反力

 Pに対する反力はA点に$H_A$として生じ。B点はローラ支点なので、水平方向の反力は生じない。

 $H_A$の大きさは水平方向の外力Pと同じなので$$H_A=10[kN]$$
 つぎに鉛直反力を求めると、鉛直反力はA点とB点に生じる。ここで鉛直方向の外力を$P_V$とすると

$\sum{Y}=0$ より
$$\begin{split}V_A+V_B-P_V&=0\\ \\ V_A+V_B&=0・・・(1)\\ \\ \because{P_V=0}\end{split}$$

 次にA点を基点としてモーメントのつり合いを見る。

$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}P(=10kN)\times{5m}-V_B\times{5m}&=0\\ \\V_B=10[kN]・・・(2)\end{split}$$

 (1)、(2)より$$V_A=-10[kN]$$

 これらを図-3 に加えると

図-3(1) 反力の方向と大きさ

◆AC材の剪断力を求める
 AC材を適当な位置($x$)で仮想切断する

図-4 AC材に作用する反力と剪断力、曲げモーメント

$\sum{X}=0$ より
$$\begin{split}H_A(=10[kN])-Q_{AC}&=0\\ \\Q_{AC}&=10[kN]\end{split}$$

◆CD材の剪断力を求める
 AC材の時と同様にすると

$\sum{Y}=0$ より
$$\begin{split}V_A(=-10[kN])-Q_CD&=0\\ \\Q_{CD}&=-10[kN]\end{split}$$

(CD材のD側で見ると)
$$\begin{split}Q_{CD}+V_B(=10[kN])&=0\\ \\Q_{CD}&=-10[kN]\end{split}$$

◆剪断(Q)図を描く
 以上、求めた剪断力を図示すると

図-5 水平方向の外力を受けた時のラーメン構造の剪断力図の例

◆AD材の曲げモーメントを求める
 剪断力を求めた時と同様に適当な位置($x$)で仮想切断する

$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}H_A\cdot{x}-M_{AC}&=0\\ \\M_{AC}=10x\end{split}$$

◆CD材の曲げモーメントを求める
 AD材と同様にすると

$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}-V_A\cdot{x}-M_{CD}&=0\\ \\-(-10[kN])\cdot{x}-M_{CD}&=0\\ \\M_{CD}=10x\end{split}$$

※上式で $ーV_A\cdot{x}$ となっているのはモーメントの回転方向が半時計回り(-)であるため。

◆曲げモーメント(M)図を描く
 以上、求めた曲げモーメントを図示すると

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 次に図-7に示した、水平方向と鉛直方向の外力が作用するパターンを考えてみましょう。

図-7 水平方向の外力と鉛直方向の外力が作用するラーメン構造の例

◆反力を求める
 図-7 に反力の矢印を書き加える

図-7a 反力を含むラーメン構造

 水平反力は

$\sum{X}=0$ より
$$\begin{split}P_A-H_A&=0\\ \\H_A=10[kN]\end{split}$$

 鉛直反力は

$\sum{Y}=0$ より
$$V_A+V_B-P_V=0・・・(3)$$

$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}P_H\cdot5[m]+P_V\cdot2.5[m]-V_B\cdot5[m]&=0\\ \\V_B&=15[kN]\end{split}$$

 (3)、(4)より
$$V_A=-5[kN]$$

 以上を図に書き加えると

図-7b 反力の大きさと方向を加えたラーメン構造

◆AC材の剪断力を求める

$\sum{X}=0$ より
$$\begin{split}10[kN]-Q_{AC}&=0\\ \\Q_{AC}=10[kN]\end{split}$$

◆CD材の剪断力を求める
 E点に外力が作用しているので、E点で区切って考える。

$\sum{Y}=0$ より

C-E間について
$$\begin{split}-5-Q_{CE}&=0\\ \\Q_{CE}&=-5[kN]\\ \\&(0\leqq{x}\leqq2.5)\end{split}$$

E-D間について
$$\begin{split}-5-10-Q_{ED}&=0\\ \\Q_{ED}&=-15[kN]\\ \\&(0\leqq{x}\leqq2.5)\end{split}$$

◆剪断力(Q)図を描く

図-8 水平外力と鉛直外力(集中荷重)が作用するラーメン構造のQ図

◆AC材の曲げモーメントを求める

$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}H_A\cdot{x}-M_{AC}&=0\\ \\M_{AC}&=10x\\ \\&(0\leqq{x}\leqq6)\end{split}$$

◆CD材の曲げモーメントを求める
 E点に外力が作用しているので、E点で区切って、E点を中心に考える。

【C-E間について】
 C点は剛接合なので、AC材の曲げモーメントがCD材にも伝達されることを加味しなくてはならない。

$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}-5[kN]\times{x}[m]+50[kN\cdot{m}]-M_{CE}&=0\\ \\M_{CE}&=-5x+50\\ \\&(0\leqq{x}\leqq2.5)\\ \\M_{CE, x=2.5}&=37.5[kN\cdot{m}]\end{split}$$

※上式の左辺にある $+50[kN]$ はC点が剛接合であるため、AD材にかかる曲げモーメントがCD材にも伝達されるためです。
 また、$M_{CE}$ に(-)が付いているのは仮想切断面の $M_{CE}$ の回転方向が半時計回りだからです。
 C-E間では $x$ の原点はE点、C点が $x=2.5$ の点となります。

【D-E間について】

$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}-15[kN]\times{x}+M_{DE}&=0\\ \\M_{DE}&=15x\\ \\&(0\leqq{x}\leqq2.5)\\ \\M_{DE, x=2.5}=37.5[kN\cdot{m}]\end{split}$$

※D-E間では $x$ の原点はE点、D点が $x=2.5$ の点となります。

◆曲げモーメント(M)図を描く

 以上を図示すると、

図-9 水平方向と鉛直方向の外力が作用するラーメン構造のM図の例

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その7は「たわみ」について書く予定です。

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