単純梁の次は、ラーメン構造のQ図、M図です。
ラーメン構造は柱と梁が剛接合でがっちり固定されている構造で、ドイツ語のRahmen(額縁)からきています。ラーメン構造は建物の構造で最もよく使われている構造です。
鉄骨ファブで作るほぼ99%はラーメンと言っても良いくらいです。
ラーメン構造のQ図、M図の力の符号と記載する位置を図-1a, 1bに示します。
図-1a ラーメン構造のQ(N)図の符号と記載位置
(外側が+、内側が-)
図-1b ラーメン構造のM図の符号と記載位置
(外側が-、内側が+)
Q図(N図)の場合は構造を示す線の外側を+、内側を-とします。
M図の場合はその反対で、内側を+、外側を-とします。
では、簡単な例として図-2のようなパターンについて、Q(剪断力)図とM(曲げモーメント)図を考えていきましょう。ABCDはラーメン構造とします。
図-2 簡単なラーメン構造の例
図-2 において外力はC点に外力Pが作用しているだけです。
◆反力を求める
反力の図は図-3で示される。
図-3 ラーメン構造に生じる反力
Pに対する反力はA点に$H_A$として生じる。B点はローラ支点なので、水平方向の反力は生じない。
$H_A$の大きさは水平方向の外力Pと同じなので$$H_A=10[kN]$$
つぎに鉛直反力を求めると、鉛直反力はA点とB点に生じる。ここで鉛直方向の外力を$P_V$とすると
$\sum{Y}=0$ より
$$\begin{split}V_A+V_B-P_V&=0\\ \\ V_A+V_B&=0・・・(1)\\ \\ \because{P_V=0}\end{split}$$
次にA点を基点としてモーメントのつり合いを見る。
$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}P(=10kN)\times{5m}-V_B\times{5m}&=0\\ \\V_B=10[kN]・・・(2)\end{split}$$
(1)、(2)より$$V_A=-10[kN]$$
図-3(1) 反力の方向と大きさ
◆AC材の剪断力を求める
AC材を適当な位置($x$)で仮想切断する
$\sum{X}=0$ より
$$\begin{split}H_A(=10[kN])-Q_{AC}&=0\\ \\Q_{AC}&=10[kN]\end{split}$$
◆CD材の剪断力を求める
AC材の時と同様にすると
$\sum{Y}=0$ より
$$\begin{split}V_A(=-10[kN])-Q_CD&=0\\ \\Q_{CD}&=-10[kN]\end{split}$$
(CD材のD側で見ると)
$$\begin{split}Q_{CD}+V_B(=10[kN])&=0\\ \\Q_{CD}&=-10[kN]\end{split}$$
◆剪断(Q)図を描く
以上、求めた剪断力を図示すると
図-5 水平方向の外力を受けた時のラーメン構造の剪断力図の例
◆AD材の曲げモーメントを求める
剪断力を求めた時と同様に適当な位置($x$)で仮想切断する
$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}H_A\cdot{x}-M_{AC}&=0\\ \\M_{AC}=10x\end{split}$$
◆CD材の曲げモーメントを求める
AD材と同様にすると
$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}-V_A\cdot{x}-M_{CD}&=0\\ \\-(-10[kN])\cdot{x}-M_{CD}&=0\\ \\M_{CD}=10x\end{split}$$
※上式で $ーV_A\cdot{x}$ となっているのはモーメントの回転方向が半時計回り(-)であるため。
◆曲げモーメント(M)図を描く
以上、求めた曲げモーメントを図示すると
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次に図-7に示した、水平方向と鉛直方向の外力が作用するパターンを考えてみましょう。
図-7 水平方向の外力と鉛直方向の外力が作用するラーメン構造の例
図-7a 反力を含むラーメン構造
水平反力は
$\sum{X}=0$ より
$$\begin{split}P_A-H_A&=0\\ \\H_A=10[kN]\end{split}$$
鉛直反力は
$\sum{Y}=0$ より
$$V_A+V_B-P_V=0・・・(3)$$
$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}P_H\cdot5[m]+P_V\cdot2.5[m]-V_B\cdot5[m]&=0\\ \\V_B&=15[kN]\end{split}$$
(3)、(4)より
$$V_A=-5[kN]$$
図-7b 反力の大きさと方向を加えたラーメン構造
◆AC材の剪断力を求める
$\sum{X}=0$ より
$$\begin{split}10[kN]-Q_{AC}&=0\\ \\Q_{AC}=10[kN]\end{split}$$
◆CD材の剪断力を求める
E点に外力が作用しているので、E点で区切って考える。
$\sum{Y}=0$ より
【C-E間について】
$$\begin{split}-5-Q_{CE}&=0\\ \\Q_{CE}&=-5[kN]\\ \\&(0\leqq{x}\leqq2.5)\end{split}$$
【E-D間について】
$$\begin{split}-5-10-Q_{ED}&=0\\ \\Q_{ED}&=-15[kN]\\ \\&(0\leqq{x}\leqq2.5)\end{split}$$
◆剪断力(Q)図を描く
図-8 水平外力と鉛直外力(集中荷重)が作用するラーメン構造のQ図
◆AC材の曲げモーメントを求める
$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}H_A\cdot{x}-M_{AC}&=0\\ \\M_{AC}&=10x\\ \\&(0\leqq{x}\leqq6)\end{split}$$
◆CD材の曲げモーメントを求める
E点に外力が作用しているので、E点で区切って、E点を中心に考える。
【C-E間について】
C点は剛接合なので、AC材の曲げモーメントがCD材にも伝達されることを加味しなくてはならない。
$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}-5[kN]\times{x}[m]+50[kN\cdot{m}]-M_{CE}&=0\\ \\M_{CE}&=-5x+50\\ \\&(0\leqq{x}\leqq2.5)\\ \\M_{CE, x=2.5}&=37.5[kN\cdot{m}]\end{split}$$
※上式の左辺にある $+50[kN]$ はC点が剛接合であるため、AD材にかかる曲げモーメントがCD材にも伝達されるためです。
また、$M_{CE}$ に(-)が付いているのは仮想切断面の $M_{CE}$ の回転方向が半時計回りだからです。
C-E間では $x$ の原点はE点、C点が $x=2.5$ の点となります。
【D-E間について】
$\sum{M}=0$ より
$$\begin{split}-15[kN]\times{x}+M_{DE}&=0\\ \\M_{DE}&=15x\\ \\&(0\leqq{x}\leqq2.5)\\ \\M_{DE, x=2.5}=37.5[kN\cdot{m}]\end{split}$$
※D-E間では $x$ の原点はE点、D点が $x=2.5$ の点となります。
◆曲げモーメント(M)図を描く
以上を図示すると、
図-9 水平方向と鉛直方向の外力が作用するラーメン構造のM図の例
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その7は「たわみ」について書く予定です。