鉄骨製作管理技術者1級受けてみた(その5 単純梁の軸力図、剪断力図、曲げモーメント図)

 ラーメン構造の問題では剪断力図や曲げモーメント図を書く(選ぶ)問題が出題される可能性があります。
 この問題を解くには、まず単純梁の剪断力図と曲げモーメント図を理解している必要があります。

 今回はラーメン構造の剪断力図、曲げモーメント図の前に、単純梁に関する剪断力図、曲げモーメント図について書いていきます。


 梁に掛かる荷重の種類として

①集中荷重
②分布荷重
③モーメント荷重

の三種類があるので、軸力、剪断力、曲げモーメントについてもそれぞれの荷重のタイプごとに書いていきます。

①単純梁に集中荷重が作用した時の
1)反力を求める
2)軸力、剪断力、曲げモーメントを数式化する
3)軸力図、剪断力図、曲げモーメント図を書く

②分布荷重が作用した時の1)~3)

③モーメント荷重が作用した時の1)~3)

 以上①→②→③の順に進めていきます。

 まずそのまえに、ルールとして、軸力(N)、剪断力(Q)、曲げモーメント(M)のプラス・マイナスは以下の図のように決められているので、覚えておきましょう。

図-1  軸力のプラス・マイナス(引張が(+)、圧縮が(-))

 

 図-2  剪断力のプラス・マイナス

 

図-3  曲げモーメントのプラス・マイナス

 

①単純梁に集中荷重が作用した場合
 図-3 のような場合を考える。

図-3 集中荷重が作用している単純梁

①-1)反力を求める

 前提として水平方向の力、鉛直方向の力、モーメント力は釣り合っているので、$$\begin{split}\sum{H}&=0\\  \\ \sum{V}&=0\\ \\ \sum{M}&=0\end{split}$$
 水平方向の力は作用していないので省略。
 鉛直方向については$$V_A+V_B-P=0・・・①-(1)$$
 モーメント力については支点Aから考えて$$100[kN]\times6[m]-V_B[kN]\times(6+4)[m]=0・・・①-(2)$$①-(1)と①-(2)より$$V_A=40[kN]$$ $$V_B=60[kN]$$

 

①-2)軸力、剪断力、曲げモーメントの数式化

 ルール:仮想切断の形は+の形状として数式化する。

◆軸力(N)$$\sum{X}=0 : 0+N=0\quad(図-3の場合、軸方向力が作用していない)$$
◆剪断力(Q)$$\begin{split}\sum{Y}=0 : V_A-Q&=0\\40-Q&=0\\Q&=40\quad(Aから0m \leqq{x}\leqq6m)\\ \\Q+V_B&=0\\Q+60&=0\\Q&=-60\quad(Bから0m\leqq{x}\leqq4m)\end{split}$$(Aから6mの位置で剪断すると剪断部の右側断面が現れ、その部位には下向き(-)の力が作用していることになる。またB点から4mの位置の剪断面では上向き(+)の力が作用していることになる)

◆曲げモーメント(M)$$\begin{split}\sum{M}=0 : 40x-M_{A}&=0\\M_{A}&=40x\quad(Aから0m \leqq{x}\leqq6m)\\ \\-60x+M_{B}&=0\\M_{B}&=60x\quad(Bから0m\leqq{x}\leqq4m)\end{split}$$(Aから6mの位置で剪断すると剪断部の右側断面が現れ、その部位には反時計回り(-)のモーメント力が作用していることになる。またB点から4mの位置の剪断面では時計回り(+)のモーメント力が作用していることになる)

 

①-3)軸力図、剪断力図、曲げモーメント図を描く

◆軸力図(N図)
 図-3のパターンでは軸力が作用していないので、省略する。軸力図の例は後述する。

◆剪断力図(Q図)
 剪断力の数式より荷重の作用点を境に $Q_A=40$ と $Q_B=-60$ の傾きのない水平の直線で表される。また、図‐4 のように作図することもできる。

図-4 単純梁に集中荷重が作用した時の剪断力図

◆曲げモーメント図(M図)
 曲げモーメント図は軸力図、剪断力図とことなり梁を示す直線よりも下側を(+)域、上側を(-)域とするので間違わないように注意する。
上述のように曲げモーメントの数式はそれぞれ支点A、支点Bから荷重作用点に向かっていくので、X軸の方向が逆向きになっている。
 点Aから 0m ≦ x ≦ 6m の範囲では点Aから荷重作用点に向かって、傾き40の直線となる(+は下側なのに注意する)。荷重の作用点での曲げモーメント値は240[kN・m]。
 点Bから 0m ≦ x ≦4m の範囲では点Bから荷重作用点に向かって、傾き60の直線となる(x軸の方向が逆になることに注意する)。荷重の作用点での曲げモーメント値は240[kN・m]。 

 また、次のように作図することもできる。
 点Cに両端から作用するモーメントは釣り合っておりモーメント値は同じになるので、どちらかの端点から荷重作用点への曲げモーメント値を求め、図の荷重  点の位置に記入する、その点から両端に直線を引く。
 以上を図-5 にまとめる。

図-5 単純梁に集中荷重が作用した時の曲げモーメント図

~軸力図について~

【例1】図-6のような、10[kN]の軸方向の外力が図のように作用している場合

図-6 軸方向力が梁の端部から軸方向と平行に外力が作用している場合

(1)反力を求める
 水平(X)方向の反力(H_A)は10[kN]

(2)軸力を数式化
$$\begin{split}\sum{X}=0 : H_A+N&=0\\ \\10+N&=0\\ \\N=-10[kN]\end{split}$$

(3)軸力図を描く
 図より軸方向の外力はB点からA点にわたり部材全体に作用しているので、

図-7 図-6 に対する軸力図

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【例2】下図のように、外力が斜めに梁の中央に斜め方向に作用している場合

図-8 梁の途中に斜め方向に外力が作用する場合

(1)反力を求める
 外力のうち、軸に平行な成分を求めると図より8[kN]であることが分かる。$$\because10[kN]\times\frac{4}{5}=8[kN]$$従って水平反力も8[kN]となる。 

(2)軸力を数式化
$$\begin{split}\sum{X}=0 : H_A+N&=0\\ \\8+N&=0\\ \\N=-8[kN]\end{split}$$

(3)軸力図を描く
 軸方向の外力の作用点はC点であるから、A点からC点とC点からB点に分けて考えると、軸方向力はC点からA点に向かって作用しているが、C点からB点の間には作用していない。
 従って軸力図は

図-9 図-8 に対する軸力図

②単純梁に分布荷重が作用した場合
 図-6 のような場合を考える。

図-10 分布荷重が作用している単純梁

②-1 )反力を求める

 分布荷重の場合、荷重の合力は梁中央部に作用していると考える。
 従って、合力$P=10[kN/m]\times10[m](=100[kN])$。

 軸方向の反力:水平方向の外力が無いので省略する。

 鉛直方向の反力:$\sum{Y}=0$
$$V_A+V_B-100=0・・・②-(1)$$

 モーメントの反力:$\sum{M}=0$
$$100[kN]\times5[m]-V_B\times10[m]=0・・・②-(2)$$

 ②-(1)、②-(2)より$$\begin{split}V_A&=50[kN]\\ \\V_B&=50[kN]\end{split}$$

 

②-2)軸力、剪断力、曲げモーメントの数式化

 A点から$x$[m]の位置で仮想切断する(ルールより、仮想切断部の形はそれぞれの符号が+と設定すること)。
 仮想切断した部分は下図の通りである。
 下図に則り、軸力、剪断力、曲げモーメントを数式化する。

図-11 図-10 の梁を任意の箇所で仮想切断した時の概念図

◆軸力(N):作用していないので省略

◆剪断力(Q):$\sum{Y}=0$

$$\begin{split}V_A-qx-Q&=0\\ \\Q&=-qx+V_A\\ \\Q&=-10x+50・・・②-(3)\end{split}$$

◆曲げモーメント(M):$\sum{M}=0$

$$\begin{split}V_A\times{x}-qx\times\frac{x}{2}-M&=0\\ \\M&=-\frac{q}{2}\cdot{x^2}+V_{A}\cdot{x}・・・②-(4)\end{split}$$

 

②-3)N図、Q図、M図を描く

◆N図:軸力は作用していないので省略

◆Q図:②-(3)式より、A点($x=0[m]$)では$$Q_{x=0}=50[kN]$$

梁中央($x=5[m]$)では$$Q_{x=5}=0[kN]$$

B点($x=10[m]$)では$$Q_{x=10}=-50[kN]$$

以上よりQ図は下の通りになる。図-12 分布荷重が作用している梁のQ図

◆M図
(※M図は他と違い、上側が-領域、下側が+領域であることに注意!)
②-(4)式より下に凸の2字曲線(放物線)になる。
 A点($x=0[m]$)では$$M_{x=0}=0[kN\cdot{m}]$$

 梁中央($x=5[m]$)では$$M_{x=5}=125[kN\cdot{m}]$$

 B点($x=10[m]$)では$$M_{x=10}=0[kN\cdot{m}]$$

 以上よりQ図は以下の通りになる。

図-13 分布荷重が作用する梁のM図

 

③単純梁にモーメント荷重が作用した場合

 図-14 に示す単純梁にモーメント荷重が作用する場合を考える。

図-14 モーメント荷重が作用する単純梁

③-1)反力を求める

 水平反力は省略する
 鉛直反力:$\sum{Y}=0$より

$$\begin{split}V_A+V_B-P&=0\\ \\V_A+V_B&=0・・・③-(1)\\ \\ \because{P=0}\end{split}$$

 モーメント:$\sum{M}=0$より$$100[kN\cdot{m}]-V_B\times{10[m]}=0・・・③-(2)$$

③-(1)、③-(2)より

$$\begin{split}V_B&=10[kN]\\ \\V_A&=-10[kN]\end{split}$$

③-2)剪断力、曲げモーメントを数式化する

 モーメント荷重がC点(A点から6mの位置)に作用しているので、C点で分割して考える。
 図-15 にC点で仮想切断した図を示す。

図-15 図-14 の梁をC点で仮想切断

◆剪断力(Q)

$\sum{Y}=0$
 A点~C点の範囲について

$$\begin{split}V_A-Q_{A-C}&=0\\ \\Q_{A-C}&=V_A\\ \\Q_{A-C}&=-10[kN]\end{split}$$

ただし $0[m]\leqq{x}\leqq6[m]$

 B点~C点の範囲について

$$\begin{split}V_B+Q_{B-C}&=0\\ \\Q_{B-C}&=-V_B\\ \\Q_{B-C}&=-10[kN]\end{split}$$

ただし $0[m]\leqq{x}\leqq4[m]$

◆曲げモーメント(M)
$\sum{M}=0$
 A点~C点の範囲について
$$\begin{split}V_A\cdot{x}-M_{A-C}&=0\\ \\M_{A-C}&=V_A\cdot{x}\\ \\M_{A-C}&=-10x[kN\cdot{m}]\end{split}$$

ただし $0[m]\leqq{x}\leqq6[m]$

 B点~C点の範囲について
$$\begin{split}-V_B\cdot{x}+M_{B-C}&=0\\ \\M_{B-C}&=V_B\cdot{x}\\ \\M_{B-C}&=10\cdot{x}\end{split}$$

ただし $0[m]\leqq{x}\leqq4[m]$

③-3)Q図、M図を描く

◆Q図

剪断力の式より(図-16)

図-16 モーメント荷重が作用している単純梁のQ図

◆M図

曲げモーメントの式より
A点からC点の範囲について(A点が0[m]点)
$$M_{A-C}=-10\cdot{x}$$

($0\leqq{x}\leqq6$)

$$\begin{split}M_{A-C, x=0}&=0[kN\cdot{m}]\\ \\M_{A-C, x=6}&=-60[kN\cdot{m}\end{split}$$

B点からC点の範囲について(B点が0[m]点、$x$軸の方向がA-C間と逆になる)
$$M_{B-C}=10\cdot{x}$$

($\leqq{x}\leqq4$)

$$\begin{split}M_{B-C, X=0}&=0[kn\cdot{m}]\\ \\M_{B-C, x=4}&=40[kN\cdot{m}]\end{split}$$

以上を図示する(図-17)

図-17 モーメント荷重が作用している単純梁のM図

 

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