管理許容差と限界許容差

 建築鉄骨の品質管理、検査に従事している人にはおなじみの「許容差」ですが、設計寸法との誤差がどこまでなら許容できるかということを言っています。
その「許容差」ですが「管理許容差」と「限界許容差」という二つの値が定められています。
 これらの二つの許容差の意味の違いを説明できますか?

 【管理許容差と限界許容差の違い】
 非常にわかりやすい解説が一般社団法人日本建築学会から出版されている「鉄骨精度測定指針」のp.33、3章3節「限界許容差と管理許容差」書かれています。
 引用しますと、「限界許容差は、これを超える誤差は原則として許されないものとして個々の製品の合否判定のために定めた基準値である。一方、管理許容差は、製品の95%以上が満足するように製作・施工上の目安として定めた目標値である...」。
 つまり、限界許容差を逸脱した製品はイコール「不良品」であり、修正、作り直しの対象です。一方、管理許容差を逸脱してもその製品は「良品」であり、修正の必要はありません。つまり「限界許容差は製品の良・不良の判定基準」です。

 では、「管理許容差が合否判定の基準でないなら、何のための基準なの?」という疑問が当然湧いてくるとおもいます。
 答えは「管理許容差は鉄骨ファブの加工工程、品質管理体制、技能の習熟度などの製造システムを管理するための基準」です(書類検査と対物検査での検定にも使います)。

【管理許容差による状況把握】
~パターン1~
 全ての計測対象箇所の内、管理許容差内に収まっているのが95%であれば、その鉄骨ファブはコスト的にも、製造効率的にも最もバランスが取れている状況です。この状態では管理許容差を超えるけれど限界許容差を超えない修正を必要としない箇所は全体の5%、限界許容差を超え修正を要する箇所は全体の0.3%程度発生する(同じようなものを数百台つくると1箇所発生する)といわれています。

~パターン2~ ☜ありがちなパターン
 管理許容差内に収まっているのが95%を超えるのが常態化していれば、過剰管理状態でコスト過剰、製造効率も低い状況であり、製造システムを改善する必要があります。
 管理許容差と限界許容差の意味を理解せず、「管理許容差が厳しい値なので、これを合否判定基準とすれば安心だ」と思っているとこうなります。その結果、修正箇所は極めて少なく(現実的には生じない)なりますが、過剰管理によって製造効率が低下し、長時間労働を招き、製造コストも検査コストも増大し、利益率が低下、経営状態が悪化することになります。

~パターン3~ ☜名ばかりグレードファブのパターン
 反対に管理許容差内に収まっているのが95%を下回ることが常態化していれば、管理不足で品質が良くないということになり、この場合も同様に改善の対象です。
 これは加工施設の性能低下とメンテナンス不足、技能者の技量不足、社員教育に対するコスト不足、品質向上、管理に対する経営者や従業員の意識の欠落によることが多いと思います。穿った見方をすれば、受注のために有資格者の名義を借りたりして、実力以上のグレード認定をとったファブかもしれません。
いずれにしろこの状況を改善できなければ、製品を作っても修正だらけで、製造効率は低下、修正や再製作により生産コストは増大、長時間労働の発生、信用は失墜し、やはり経営状態は悪化するでしょう。

【95%が管理許容差を満足するとは】
 95%が管理許容差を満足するということについて。
 例えば、下の図のような柱が20台あるとすると、階高の測定箇所は2×4×20=160箇所、全長は4×20=80箇所、仕口の長さは4×2×20=160箇所あります。
 95%が管理許容差を満足するということは仕口の長さや階高では152箇所が管理許容差内、管理許容差を超えるが限界許容差は満足するのが8か所である状態、全長であれば76箇所が管理許容差内という状態です。

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